| 江積×結奈ＳＳ おまけ |
放課後。
「一緒に帰ろうぜ。」
先輩が迎えに来る。
教室の入り口からひょいと顔だけ覗かせて、そう言う先輩は良く目立つ。
背が高いのもあるけど、やっぱり格好良い。
「はーい、すぐ行きます！」
ちょっぴり羨ましそうな皆の視線をくすぐったく受け止めながら、私は先輩の元へ向かう。
軽く視線で合図すると香澄が笑って見送ってくれた。
「お待たせしました。」
「おう！じゃ、行こうぜ。」
二人並んで歩く。
学校を出て静かな住宅街を歩きながら話したり、時に沈黙さえも心地いい。
平和で幸せな日常。
好きな人がいて、友達もいて最高だよね･･･
と、私が一人幸せをかみしめていた時、先輩が小さな声で聞いてきた。
「なあ、お前ってさ。前世の事って覚えてるのか？」
「え･･･？」
思わず答えに詰まる。
そう、私には前世の記憶がある。
灯如尼という過去の人生の記憶。
それは決して幸せなものではなかった。
大切な人を失った悲しみと、戦いの記憶だったから。
実際、八房をお母さんと一緒に眠らせてあげる事は出来なかったし。
「ふーん、そっか。」
先輩の何だか奥歯に物が挟まったような態度に私は困ってしまった。
「何か･･･気になることでもあるんですか？」
あまり思い出したい過去でもないんだけど。
「あー･･･いや、その･･･。」
気まずそうに視線を逸らす先輩の顔は赤かった。
「前のお前って･･･付き合ったヤツとか、結婚とか･･･してたのか？」
「はあ？」
かなりすっ飛んだ質問に、答えるより先に呆れてしまう。
えーと･･･もしかして、それはアレですか？
「先輩、それ妬いてます･･･？」
「うっ！いや、だって、そりゃ･･･気になるだろーが！」
真っ赤になってうろたえる先輩はちょっと可愛かった。
「あはははは。」
良かった。
辛い昔を思い出さなきゃいけない話じゃないんだ。
そう思ったらおかしくなった。
もちろん、妬いてた事を笑われたと思った先輩は不機嫌そうだったけど。
「笑うなよ！」
「だって、前世の話ですよ。」
「･･･俺は前世とか全然覚えてないからいいけどな。
もし、前に付き合ったヤツとかが同じように転生してたらどうする？」
先輩はちょっとふてくされたみたいに呟いた。
まあ、そういう心配してくれるのも嬉しいけどね。
「先輩だって、散々私に小学校時代の初恋の話したじゃないですか。私だって妬きますよ？」
私は悪戯っぽく笑って先輩の顔を覗きこんだ。
「そんなの！もう何年も前の話だろーが。大体、初恋くらいお前だってあるだろ？」
「それはまあ。でもだったら、私の前世なんか何百年も前の話ですよ。
先輩の初恋の方がずっと一生懸命っぽかったですけど？」
「まあ、な･･･。あれは･･･」
言いかけて先輩は目を伏せた。
あれ？やっぱりまだ聞いちゃいけなかったかな？
先輩、まだ引きずってる･･･？
「あれは、やっぱりただの初恋ってやつだったよ。
もし違ってるとするなら、あれが俺にとって初めて知る『死』だったってことだ。
ガキだったから人が死ぬってちゃんと知らなかったしな。
自分の知ってる連中はずっとずっと生きてて当たり前だと思ってた。
死んでいなくなってそれっきり、って想像もしてなかったよ。
だから、きっと忘れられなかったんだ。色々、ショックだったし。」
どこか遠い国の話でもするみたいに淡々と話す先輩に私は今更ながら申し訳なくなった。
「すみません。･･･その、無理に聞いちゃって。」
「ん？いいんだ。もう吹っ切ったことだ。それより･･･」
先輩がじろっと私を睨む
な、何？
「俺は話したんだから、お前も言えよ。」
私から聞き出すために話したんですか、先輩･･･。
少し呆れてしまった。
「先輩、私の前世はね･･･。」
そこで区切ると先輩は黙って聞き耳を立てていた。
凄く真剣な表情で。
「尼さんだったんですよ。結婚どころか付き合った人もいませんから。･･･安心しました？」
「そうか･･･。」
比較的冷静を装っているけど、先輩の全身から嬉しそうなオーラが出まくりだった。
わかりやすいなあ。
なんだかおかしくなってしまう。
「あ、こら！お前また人のこと笑いやがって！」
「あはは、だって先輩ってばすごい真剣な顔してるんですもん。」
真っ赤になった先輩を残して私は走り出した。
「こら！待て！」
先輩が追いかけてくる。
香澄によく言われるけど、確かにコレは傍から見たら立派にバカップル、だ。
でもいいや。
楽しいし、幸せだ。
数百年前まで遡って妬いてくれる人なんてそうそういないよね。
きっとこれからだってずっと一緒に仲良くやっていけると思う。
もし、来世があったら次も先輩に会えるといい。
そう思うくらい･･････大好き！
| ＴＯＰ |
| あとがきＴＡＬＫ |
えーっと･･･テーマは江積による結奈フォロー最終版、です。 書きながら灯如尼ってホントに前世に相手いなかったっけ？と記憶が曖昧になっていました(ダメじゃん！) 元ネタの八犬伝にも詳しいわけではないんで、違ってたらごめんなさい。 その場合、結奈がフォローの意味で嘘をついたことにでもしておいてくださいな。 そして、江積の初恋ネタはゲーム中でかなり半端な位置づけで・・・ビミョー！と思ったのでこれも勝手にフォロー。 小さい頃に初めて知ってる人が死んだから衝撃だったに違いない！ 今は結奈一筋さ！！ しかし、私が書くと江積は微妙にばかっぽくなってしまいますね・・・最愛なのに・・・うーん・・・。 |